古屋圭司通信

 本日の文部科学委員会にて川端達夫文部科学大臣に対し質問を行いました。
 詳細はこちらから審議の模様をご覧下さい。
 議事録は後日掲載させて頂きます。
<質疑の概要>
1.川端大臣は外国人の地方参政権について賛成か反対か。
2.「コンクリートから人へ」という民主党政策のキャッチフレーズによって「土木」に対するイメージが悪くなり、このことが土木系学科のある工業高校の生徒数や就職などへの影響が大きく及んでいる。
将来土木を支える人材がいなくなることは、日本が世界に誇る技術を担う人がいなくなることであり、土木という国の根幹に関わる危機となる。
国土交通省にも働きかけ早急に対応をすべき。
3.外科医になる新しい人が激減である。
その理由として、外科治療のリスクが高いことで、結果によって刑事訴追になることがあり、それを避ける医師志望が増えている。
このままでは、将来外科医の先生がいなくなるという危機さえあり、まさにこのことは医療問題ではなく教育問題である。
リスクマネジメントを含め、対応を厚生労働省・法務省と連携し文部科学省が対応をしていくべき。


○田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。古屋圭司君。
○古屋(圭)委員 自民党の古屋圭司でございます。
 大臣に質問させていただきます。これはちょっと事前通告はしていないんですが、一言、大臣の見解をお伺いしたいと思います。それは、永住外国人に参政権を与えるかどうか、この問題について御見解をお伺いしたいと思います。
 というのは、去る四月十七日に全国大会が、武道館で反対の集会が行われまして、このときにゼンセン同盟の石田副会長が出席をされて、この問題についてはゼンセン同盟としては反対をすると。それは、基本的人権とは別次元であるとか、あるいは、国民の主権として担う権利であるからだ、納税と参政権は全く結びつかないとか、国民の固有の権利であるというような趣旨で反対をされたということを私も聞いております。
 大臣は組織内候補でもあられます。そして、ネットで調べてみましたら、前の選挙のときにも、外国人参政権については慎重に取り扱う、こういうスタンスで、公表された世論調査でもそれが出ております。
 もちろん、これは閣議決定されたわけでもないし、あるいは、提出をするということを決定したわけでもない法案でございますので、現に亀井大臣などは反対の意向を表明しています。これはやはり、閣僚とはいえ、自分の意思を表明するということに何の差しさわりもないと思いますので、ぜひ、この永住外国人に対する参政権の問題について川端大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○川端国務大臣 永住外国人の地方参政権問題については、幅広い国民のいろいろな議論があることは承知していますし、私も議論にかかわってきた経過もございます。
 民主党としての選挙までの対応としては、方向性としては、そういう問題を前向きに検討していって実現するべき課題という認識を示しつつも、法案化するに関しては、世論の動向を見て慎重に時期を対応すべきであるというのが、党としての、渡部恒三先生が座長のもとでの取りまとめでありました。そういう意味で、マニフェストに記載せずに今日に至っているということであります。
 私も、地政学、地域上、在日の方はたくさん周りにおられますし、そういう方の交流の中で彼らの願いと希望の理由もよく承知をしておりますが、ただ、いろいろな議論の中で、大変難しい問題であることも当然だと思います。
 そういう意味で、今、閣僚でなく何でもなければ私の意見は申し上げますが、閣僚として文部科学大臣という立場では、内閣の一員として内閣での議論に参加する中で、所管の部分として決められたことに従うのは当然でありますが、具体的に賛成、反対の部分に関してこの場でのコメントは差し控えたいと思います。
 なお、そう申し上げますと、亀井さんは言っているではないかというふうに言われるのかもしれませんが、大臣大臣のそれぞれのお立場と同時に、国民新党の代表としての、党としての決めもあるんだというふうに理解しておりますので、御容赦いただきたいと思います。
○古屋(圭)委員 この問題はこれ以上言いませんけれども、今、やはり大臣としては、旧民社党の政策理念からしたらやや歯切れが悪いかなという感じがしますね。前の選挙でもアンケートで反対と答えているんですから、やはり、そういうことをはっきりこういう場で率直にお答えいただいた方が大臣らしいんではないかなと思います。これはこの程度にさせていただきます。
 それでは質問に入ります。
 まず、この新しい内閣でのキャッチフレーズの一つに「コンクリートから人へ」というのがありますよね。これは、コンクリートは非常に悪いものだというようなイメージを醸成する戦略には成功したのかなという気が私はいたしますけれども、しかし、この言葉というのが教育現場で結構深刻な状況になっているということは、実は事実なわけであります。
 ファクトベースからまず申し上げますと、全国の工業高校の土木科に入学した生徒、これは、例えば岐阜県内で見ますと、平成二十年は百二十四人いたんですけれども、二十二年は八十人になっているんですね。激減しているんですよ。それからもう一つ、全国の工業高校、これは新しいベースでも二十年までしかないんですが、平成十五年が四万二千人、平成二十年が三万三千人なんですね。
 現場の教師の声を聞いてみますと、土木事業というのはやはり社会の生活の基盤であって、生命や財産を守る重要な仕事であるのだけれども、残念ながら世間では悪いイメージが非常に定着して、そのイメージが先行する結果、土木を目指す生徒というのが急激に減っている、そういう深刻な話を伺いました。もちろん、公共事業の減少による将来不安というものから土木を目指さないという事実もあろうかと思いますよ。この日本の国土を守るという観点からも、私は非常にこれは不安を感じているんです。その学校の現場の教師も同じことを言っていました。
 さて、この現状について、これだけ生徒が減っているという状況について文部科学大臣はどういう御認識をお持ちですか。まずその見解をお伺いしたいと思います。
○川端国務大臣 民主党がコンクリートから人へというのをある種のコピーの一つとして使ったことは事実でありますが、それは、先生御指摘のコンクリートは悪者であるという意味ではなくて、私たち教育現場の政策においては、ハードからソフト、ヒューマンへという、コンクリートという言葉は使いませんでしたが、要するに、税金の使い道の中でソフト、ヒューマンを重視しようという方向をあらわす言葉として使ったことは事実でありますが、必ずしもそれが、受けとめによってコンクリートは悪いもののシンボルだというふうに受けとめられる部分が、ないとは申しませんが、そんなに多くあるのかなというのが個人的な感じとしてあります。
 今言われた部分の土木関係は、確かに、直近のデータの比較、去年とことしみたいな志望者に関して正確な、例えば、去年から民主党がこういうことを盛んに言う中でことしの入試はどうなったのかというデータはちょっと把握を申しわけないがしておりませんが、全体的、長期的に、土木ということじゃなくて大学の工学部自体、平成十一年度が六十九万四千人が平成二十一年度で五十四万六千人で、十年で二一%減、工業高校の土木学科は、平成十一年度一万一千八百六十五人が、平成二十一年度、十年後に七千八十人で四〇・三%減と、激減をしていることは事実です。
 そしてそれは、いわゆる土木、建築に係る産業が変化してきている。建設投資額が、平成十二年度六十六兆一千九百四十八億円が平成二十年度で四十七兆二千三百億円で約二八・七%減、建設業就業者は、当然ながら、平成十二年六百五十三万人が平成二十年度五百三十七万人ということで、産業構造の変化で雇用構造も大幅に変化する中でのこういう状況が生まれてきている流れはあるんだというふうに我々も認識しております。
 しかし先生御指摘のように、一方、やはり土木事業というのは、国の根幹の部分の、例えば治水、利水、国土保全、そして、新しいいろいろな住も含めたインフラ整備という部分で大きな役割を担っていることは当然でございますので、中学校や高校の時代からそういうことをしっかり認識して、そういうことに夢を持ってやってみようというふうな思いを醸成するような工学教育のトータルとしての育成に関しては、今までもこれからも力を入れてやってまいりたいと思いますし、大学においての技術者教育のあり方に関しては、これは専門の委員会を含めて今御議論をいただいているところであります。
 社会のニーズに応じて適切に人材が育っていくように、教育の分野としては取り組んでまいりたいと思っております。
○古屋(圭)委員 そういう御認識をいただいていることはありがたい話なんですが、実際、土木に従事している人というのは、御承知のように、年齢的には五十代が四七%ぐらいなんですよ。もうほとんどこれはやめていきますよ。それで、土木の技術を育成するのに、これは結構時間がかかるというのも事実なんですね。
 そうなりますと、このままいくと、現場を預かる技術者が極端に減っちゃうという事態を招きかねないんです。だから、将来、例えば大規模な災害なんかが起きたときに本当にどういう対応をするかということは、これは単に国土交通政策ではなくて、やはり教育政策の視点からも極めて重要なんですね。
 日本の土木技術は、これは世界最高です。現場の技術もいい、そしていわゆるトップの技術もすばらしい。そして、世界にしっかり貢献をしているんですね。せっかく築いたこういう伝統を崩壊しかねないと私は思うんです。
 だから、今大臣がおっしゃったように、やはり土木教育というものに対してさらに充実をしていく。こういったコンクリートから人へと言われて極端にそういったマイナスイメージが横行している今こそ、大胆な転換をしていく必要があると私は思います。今、大臣からそういったお話を伺いました。しっかりそれは加速していただきたい。
 もう一歩違う視点から申し上げますけれども、それは教育基本法です。
 教育基本法は、御承知のように、公共の精神をたっとび、国家、社会の形成に主体的に参画する国民の育成という教育目標が掲げられていますよね。この視点からすると、土木というのは、みんなのための公共的な取り組み、これは、道路にしても、治山にしても、治水にしても、砂防にしてもということだと思う。すなわち、公共性とか自然や歴史面から、土木構造物というもののいわゆる教育的素材としての価値は私は決して低くないというふうに思っています。それは、それぞれの郷土とか地域に身近にあるということもあるんですね。
 ということは、やはり、現場などで実際の取り組みを学んだりだとか、あるいはまた参加する、あるいは公共の精神をそういうことによって身につけるということになるのではないでしょうか。教育基本法に定める教育目標を達成するための教材になり得ると私は思うんです。
 私の地元でも実はこんなことをやっているんです。砂防事業は山奥ですよね。見る人はだれもいない。しかし、地域のいわゆる工事事務所とか自治体関係者とかが、学校関係者も含めて、やや危険ですから、相当事前にブリーフをしてそういったところに行くんですが、そうすると、みんなびっくりするんです。これだけやっているからこの下流域の安全が保てるんだね。だれも一般の国民は知らないんですよ。やはりそういった教育というのは非常に重要である。
 要するに、教育現場でどのようなテーマやプログラムが必要なのか、あるいは、その位置づけであるとか支援体制を具体的につくり上げて、それを実施していく必要が私はあろうかと思います。今やっている取り組みよりもう一歩踏み込んで、そういう取り組みを具体的なアクションプログラムをつくってやっていく必要があろうかと思いますけれども、大臣のこれについての見解をお伺いしたいと思います。
○川端国務大臣 教育全体として、実社会とのつながり、自分たちが学ぶこと、あるいは、自分たちが暮らしている世の中というのはどういうことなのかというのを実社会を通じて学ぶことが、勉強への意欲と目標意識を持ったということが大変大事だと思って現在取り組んでおりますが、その中で、先生が言われたことは非常に大事だと思います。
 「黒部の太陽」という映画が昔ありました。これはまさに、あの不可能と言われた場所にあれだけの巨大な世界に最大のダムをつくるということで映画になりましたが、近年、舞台化して、これがまた好評を博しました。やはり、いつの時代でもああいう問題をとらえると人の心を打つということの証明でもあり、先生の御指摘のとおりだと思いますし、実は先日、オランダのカウンターパートの大臣が来られたときに、オランダとは修好四百年を超えましたが、江戸時代はいわゆる蘭学ということで全部技術はオランダから入ってきたんですが、明治時代に私の地元の山奥にオランダ堰という砂防ダムがあって、いまだに、もう百年以上たって機能を果たしております。
 そういうようなのを子供たちが見ますと、ああ、すごい技術があるんだな、それもオランダからみたいなことで、教育に対しても非常に効果があることは事実であります。
 御指摘のように、やはり子供たちにとって、現場の、実際の世の中が動いていることを見聞きすることが教育の一番の好奇心を含めた原点だと思いますので、今言われた土木事業、土木の大切さを含めては、いろいろな工夫を凝らして、また御指摘のことも参考にしながら取り組んでまいりたいというふうに思います。
○古屋(圭)委員 ありがとうございます。
 実は、これもネットで見ておりましたら、札幌市の平岡公園小学校というところで、「みんなで創ろう美しい道」ということで、六年の総合授業で実際に、子供たちにとって一番身近な公共物だ、毎日利用しているにもかかわらず意識していない、全国どこでも存在するんだ、自然、歴史、地域性、多くの要素があるということで、非常にいい学習をされておられるんですよ。こうやって先進的にやっておられるところもあるんです。
 だから、こういうものをやはり全体の計画の中でしっかり盛り込んでいただいて、具体的なプログラムをつくり上げて、ぜひ教育現場で徹底するように取り組んでいただきたいということを改めて申し上げたいと思います。
 実は、こうやってコンクリートから人へということで昨年からこういう話がずっと横行するようになった結果、大学の教授も大変な危機感を抱いていまして、例えば、昨年八月に、これは多分選挙のころだと思うんですが、京都大学の藤井聡先生が、恐らく御存じじゃないですか、「土木と学校教育」というタイトルで初めてシンポジウムをやっているんですよ。これはかなりいいことを取り組んでいます。ぜひこういったものも参考にしながらやっていただきたい。そのためには、やはり文部科学省だけが取り組んでいても限界があるんですね。
 そこで具体的に要請をさせていただきますが、やはりこれは、国土交通省、国土交通大臣とも密接な連携をしてそういう取り組みをしていく必要があると思います。この点についてぜひそういう取り組み、協議会等々をつくって、具体的にそのアクションプログラムをつくるために対応していただきたいと思いますが、この点についての大臣の見解をお伺いしたいと思います。
○川端国務大臣 先ほど申し上げましたように、産業としての、特に、公共事業を中心とした土木事業が前政権までも含めてもどんどん減ってきて、ある種の社会的な役割という意味で、総額としてはずっと減少しているという状況にあることは事実だと思いますが、この技術の大切さそして技術力を世界に発信していくというときに、同時に、技術が世界一で、人材も非常に優秀な人材が最先端から現場の人まで抱えていることは事実ですが、ところが、世界の土木事業が全然入札できないという現状にあることも、やはり国際競争力が問われているという課題もあります。
 そういう中で、これからの土木教育がどうあるべきか、それから土木産業がどうあるべきかということとあわせて、教育においてそういう子供たちにどういう教育をしていくのかというのは極めて大事だというのは、先ほど申し上げたとおりであります。
 藤井先生のシンポジウムは私はちょっと承知しておりませんでしたが、そういうようなのもまたちょっと調べさせていただいて、国土交通大臣とも意見交換をしてまいりたいというふうに思っております。
○古屋(圭)委員 それは非常に大事な視点ですよね。やはり、国土交通政策とこの土木の人材を育てるという教育政策は両輪なんですよ。これはぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 今後この公共事業がさらに削られるということになると、私が冒頭に申し上げましたように、十年後には本当に大変な状況が起きかねないということでありますから、ぜひ、その取り組みをよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。
 さて、次もある意味では共通の視点だと思うんですけれども、御質問させていただきたいと思います。
 それは、医療というのは御承知のように厚生労働省が所管をしておりますが、この医療の中でも、最近は、産婦人科であるとか、特に産婦人科はいろいろな対応が始まっていますけれども、外科離れというのが非常に深刻になっているということであります。医療というのは厚生労働省マターということはもちろん承知しておりますけれども、実は、大学における外科の学科への志望者というのが激減していまして、深刻な状況なんです。
 例えばある有名国立大学、これは大臣の出身校でありますけれども、受験者数、外科系が昭和四十年代は五年間で百七人いましたが、平成十年代は五年間で三十一人、七〇%減ですよ。それからいわゆる脳外科、これは一九九二年に全体で四百人いたのが、二〇〇九年には二百九十人まで減っているんですね。そしてもう一つ、外科学会というのをどれぐらい入会しているかなと思って調べましたら、一九九〇年に千五百人いたのが二〇〇七年八百人、これも半減。これは、要するに新しい人が入っていないという証左なんですよ。これは深刻な話で、これは医療問題ではないんです、教育問題なんですよ。
 この現状に対してどういうふうに思われているか、まず大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○川端国務大臣 医師不足が言われて久しいんですが、特に大学の学生においてそういうことが顕著にあらわれているのは、御指摘のとおりであります。
 私も先般、母校の総長とお話をしたときもこの問題が出まして、その前に、基礎医学に進むという学生がことしはゼロであったということがあります。それでちょっと調べますと、診療科別でいいますと、外科が、平成十年に外科医師として二万四千八百六十一人が平成十八年で二万一千五百七十四で、三千二百八十七名減っている。産婦人科が、一万九百人が九千五百人というふうに、千三百人減っている。一方で整形外科が、一万七千二百二十九名が一万八千八百七十で、一千六百四十余名ふえているという現実があることは事実です。
 そしてこの問題は、一つは、これは小児科のときも言われたんですが、悪循環なんですね。お医者さんが少ないと患者さんの数がふえて、勤務が非常にハードになる。そうすると、肉体的に大変厳しいのと同時に、ミスが許されないというときに万が一ミスをすると、これは医療ミスということで、大変重い責任を負う危険性を持っているということで避けると、余計人が減る。あるいは、体がもう悲鳴を上げてやめざるを得ないというふうな悪循環に陥っているということと同時に、やはりいろいろな背景があります。
 大きく言えば、特に大学病院においては、要するに、診療報酬の改定、そして、自分たちの努力で何とか稼げるようにしなさいということで、救急とか外科とか産科とか小児科とかいう、二十四時間対応をして、採算ベースでいえば効率がよくないというところは、やはりどんどん民間でもやめていくということの中で余計負担がかかるというふうな、トータル、いろいろな切り口でしわ寄せが全部ここへ出ているのではないかというふうに現象としては認識をしております。
○古屋(圭)委員 今、幾つか原因を挙げていただきましたけれども、一番決定的な原因は、やはり、医療事故のリスクが高い、訴訟リスクが高いということに尽きるんですよ。脳外科なんかは特にそういったリスクが高いということもあって、実際、手術しない脳外科がすごいふえていますよ。だから、厚生労働省のデータを見ると、これはトリックなんですよね、余り減っていないんです。でも実際は、手術しない外科では意味がないんですね。そういうことになりますと、よい医師というのは、結局海外で育成せざるを得ない。海外依存をせざるを得ないという状況ですよ。
 現実に数%の医療事故のリスクがある。すぐそれで刑事訴追になってしまう危険性が今は現実に増大していますよ。そうなると、医者はその医療を避けようとする。その分野の医者は減る。先ほどの土木と同じように、十年後は恐ろしい世界になります。
 例えば、例は悪いですけれども、プロ野球の選手がエラーした場合に刑事責任をとらされるとか、あるいは極論すれば、テストで六十点以下だったら逮捕するぞとか、そういうようなことになりかねないんですよ。これは私、非常に危機を抱いております。
 やはり、リスクの高い外科系というのは行かないで、リスクの低い学科はたくさん来ます。そうすると、いつまでたっても、リスクの高い分野、外科であるとか脳外科の医師を育てることはできません。
 この観点から私は、これはむしろ教育政策というのが非常に重要だというふうに思っておりまして、文部省が手をこまねいていることではない。やはり、これに対して抜本的な政策を取り組んでいかなければ大変なことになるというふうに思います。いかがですか。
○川端国務大臣 いわゆるトータルの医者の数をもっとふやしたいという部分の定員とか教育環境とかいうのとは別にして、今御指摘の問題は別のところに問題がある。
 これはやはり、医学という大変崇高な使命と責任を負った分野で、例えばテレビでも、今はスーパードクターというたぐいの番組は非常に視聴率がよくて、だれでもあの先生に診てほしいということでいうとそういう道を志す子が多いかというと、先生言われるように、リスクが高くて必ずしもそうでないという、両極化しているという変な状況があります。
 そういう中で、今、大学の中でいわゆるリスクマネジメントを一生懸命教えようということで、医学教育のモデル・コア・カリキュラムにはそこに位置づけをさせてもらって、先進的に熱心に取り組んでいただいている大学も幾つも出てまいりましたけれども、そういうことはやれても、果たして、トータルとして今御指摘の問題がどこまで解決できるんだろうかというと、志を高く持ってほしいとはいえ、現実に、言われたように、エラーしたら罰金だけではなくて捕まるぞという世界がプロ野球にあったら多分プロ野球に行く人はいないというのと同じようなことを、世界の医学界と同じようなスタンダードというのはどうあるべきなのかというふうなことも大変大きな要素であります。
 大学としては、やれることをしっかりやってまいりたいと思っています。
○古屋(圭)委員 今、大学でのリスクマネジメントということがありましたが、私、これは非常に重要だというふうに思っています。
 実際、現在でもリスクマネジャーというのは一部の大学では存在して、一定の成果を上げているというのは承知はいたしておりますけれども、現実は、事故が起きたときにつくるレポートというのが、極めて精神的というか、表面的、精神論的なものが多いですよね。なぜか。やはりこれは本音が出ない。真実を語らないですね。どうしてか。それはやはり、真実を語らなければ原因究明もできませんよ。結果として、それはこのレポートが訴訟の現場で活用されてしまうからなんですよ。だったら本音を言いたくないということになって、これは非常に悪循環になっているんです。
 そうすることによって本当の原因追及ができないから、もしかしたら不可抗力だったのかもしれないし、違う新しい方法があるのかもしれない。そういったときに本当の原因究明ができないということは、医療現場の技術水準ということでも極めて問題があるんですね。
 産婦人科なんかは、いわゆる民事については無過失補償制度がありますから、例えば、外科もそういうのをつくって、とりあえず民事だけはクリアするということは必要でしょう。これは厚生労働省の問題。
 しかし一方で、医科大学において、例えばモデルケースとして、弁護士などの専門家も参加をしてもらって評価委員会をつくって、刑事訴訟については、その許される合理的な範囲内でそういった書類は一切活用しないんだ、本当に真の研究をしていくんだというようなことも私は必要だと思うんです。それはもちろん、モラルリスクだとか重大な過失がある場合は、当然のことながらその限りではないということは申し上げるまでもないですけれども、それぐらいちょっと踏み込んで対応していかないと、これは、大学の現場、大学病院の現場でまず始めていくべき。全校でやるわけにいかないから、やはり、そういったモデルケースをつくってそこまで一歩踏み込む。
 私は、それをしていかないと、受験する学生が安心して脳外科、外科に行くことができないと思いますけれども、いかがですか。ぜひこの提案を検討していただきたいと思います。
○川端国務大臣 恐らく、問題意識と対処の方策に関して私もそんなに認識は違わないと思うんですが、この問題は、大きく言えば、いわゆる民事も刑事も含めて、その責任の持ち方と社会のあり方ということの国民性も随分違います。
 ちょっと話がずれますが、薬の認可が日本は非常に長いという部分もやはり同じところにある。要するに、一つでも過ちがあってはいけないという立場をとるのか、多くの人が救われるならばそれにリスクは伴うものだと言うのか、リスクは許さないと言うのかというのは、国民性もあります。
 そういう意味で、法的な問題に間違いなくかかわりますし、原因究明という意味での、その被害に遭われた方の周辺の方から見ると、すべての真実を知りたいという部分と、それを知ると責任に及ぶから、真実を、できたら余り言いたくないと言ったら語弊がありますが、という部分との葛藤みたいなのが必ずいろいろな事件で全部出てまいりますので、大学だけでモデル的にシミュレーションすることは可能なんですが、実際にできるかどうかというのはなかなか難しい問題もあります。
 もちろん、先生御指摘のように、厚生労働省も、それから法務省も含めて幅広くやらないといけないということだと思いますので、これは大きなテーマとして認識しておりますので、我々としても、提起をしてくる大きな課題だと思っております。
○古屋(圭)委員 質疑時間が終わりました。今最後におっしゃったことは非常に重要です。ぜひそういった検討を始めていただきたいということをお願いして、質問を終わります。

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