古屋圭司通信

 日本と明白に距離を置いていた盧武鉉政権から李明博政権に変わり、李大統領も日本との新たな関係を構築すべく、シャトル外交の展開や実利外交の推進を掲げ、歴史認識問題のみに重きをおくことなく未来志向の関係の構築に向けて、順調なスタートを切った。
 しかし、BSE問題で韓国の対応が国民の信頼を失い、李大統領の支持率が急落したことが竹島問題という領土問題に飛び火しようとしている。 支持率回復の手段として反日を再び旗印にするのではないかともいわれている。
 そもそもの発端は、7月中旬に決定予定の我が国の中学校教科書の新しい学習指導要領の解説書に「竹島を我が国の固有の領土」と明記されるという報道がなされたことに始まる。竹島が我が国の固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も明らかであり、現に外務省ならびに政府は公式パンフレットを発行して、明確に我が国としての主張をしている。
 にもかかわらず、韓国政府からは、「未来に向かって進もうというわれわれの努力と逆行する行為だ」として、日本政府に対しこうした記述を入れないよう求めている。政府は、李政権の支持率急落への配慮や、サミット開催を間近に控えて、ことを荒立てたくないとの思惑もあるやに伝えられているが、領土問題は主権の根幹をなすものであり全くナンセンスな議論だ。
 韓国側は、これで反日運動が高まるとせっかくよいスタートを切った日韓関係にヒビが入り、日本政府に訴えているという。極めて意図的だ。しかし、韓国の教科書の新指導要領をみると、竹島問題は歴史ではなく地理で教えることが決まっており、明らかに地理的にも韓国の領土であることを教える内容となっている。
 ここで、日本が物分りのよい対応をすれば、韓国側の主張を容認したことと理解され、我が国の国益を考えればあってはならないことである。ましてや子供たちが学ぶ教科書の解説書に、我が国の立場を教えることは当たり前のことであり、文部省はもとより外務省、政府は毅然たる態度で対応すべきだ。

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